その日、娘はリビングでテレビを見ていた。
パパはダイニングで仕事をしていた。在宅ワークなので、リビングとダイニングの境目で生活している。
娘が何かのアニメを見ていて、画面の中でキャラクターが動いていた。娘はソファに寝転んで、ぼーっと見ていた。
そのとき聞こえた。
「…it’s so big.」
パパは手を止めた。
聞き間違いかと思って、もう一度娘の方を見た。娘はテレビに向かってまだ何か小声で言っていた。日本語と英語が混じっていた。「うわ、でっかいね、like、すごい。」
娘はパパが聞いていることに気づいていなかった。誰かに向けて言っているわけでも、パパに見せようとしているわけでもなかった。ただ、思ったことが英語で出てきた、という感じだった。
英語を始めてしばらく経っていた。
最初の1ヶ月は、効果なんて全くわからなかった。娘がレッスン中に何を話しているか、うまくできているのかどうかも、英語が得意じゃないパパには判断できなかった。
2ヶ月目、娘が「先生にHappy birthday言ったら喜んでくれた」と教えてくれた。初めて「あ、外に向かって英語が出た」と感じた瞬間だった。
しばらくで、独り言になった。
パパ
何かを「できるようになった」より、自然に「出てくる」になった方が、本物だと思う。
娘に「今、英語で言ってたよね」と声をかけた。
娘はきょとんとした顔をして「えっ、言ってた?」と言った。
意識してなかったらしい。「it’s so big」が自然に口から出た、ということも気づいていなかった。
パパは「すごいじゃん」と言った。娘は「そうかな」と言って、またテレビに戻った。
記事に書くほどのことじゃないかもしれない。でも、パパにとってはこの日が「あ、やっててよかった」と初めて思えた日だった。
成績が上がったわけでも、英検に受かったわけでも、ペラペラになったわけでもない。テレビを見ながら「it’s so big」と言っただけだ。
でもあれは、英語が「使うもの」になった瞬間だったと思う。勉強として学んでいたものが、言葉として出てきた日。
ちなみにその日のレッスンで先生に「今日、テレビ見ながら英語で独り言言ってたよ」と伝えたら、先生が「Wow, really? That’s amazing!」と大げさに驚いてくれた。
娘は照れながらも、うれしそうにしていた。
英語が続いているのは、そういう小さい日の積み重ねだと思っている。
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